チャンマールタイムス

様々なニュースについて語ります。

商売人の心得

その1:儲けるという事はどういうことか。

 

 生きていく上で人は他人と何かしらの取引をしなければなりません。人類の歴史は経済の歴史と同義であり、また人間社会は経済社会と同義であります。経済とは「人間の営みそのもの」であると言えます。

 そんな中で、現代我々は「自由主義」「資本主義」という土台の上に設計された社会で生活しています。自由主義を採用していない国や資本主義を採用していない国もありますが、貿易で世界中がつながっている現代、主義思想とは関係なく「ものを売り買いして儲ける事」からは、人は逃れることが出来ないのが現代社会であります。

 

 今まさにウクライナとロシアが戦争をしています。人類の歴史はまた、「戦争の歴史」でもあります。国と国の戦争だけでなく内戦、紛争、テロリズム、といった悲劇に歴史は彩られています。

 また、国内に目を転じても、時折ニュースをにぎわせる殺人事件などの悲劇が、我々の身近にもあります。つい先日も、一国の宰相であった人物が手製の拳銃で殺害される事件があったばかりです。

 

 こういった、我々人類の「悲劇」。これを紐解いていくと必ず出てくる要素があります。それは「貧困」です。貧困そのものでなくても、貧困への恐れや、富を失う事が、それらの戦争や事件の原因となっているケースは数多く指摘できます。

 

 個人的な話ではありますが、私の親は大変平和教育に熱心であったため、物心つく前から絵本や漫画という形で戦争教育を施され、映画・演劇などでみっちり平和について考えさせられました。沖縄に住んでいた頃はここぞとばかりに資料館・写真展示等に連れていかれたものです。年端も行かない子供でしたが、白黒とは言え原型を留めないまでに破損したご遺体、黒焦げのご遺体、それらが無数に散乱する写真を数多く、これでもかと見せられて育ちました。今でもうなされる事がある程度にはトラウマになっています。

 そんな訳で、私は恐らく人一倍平和を願う気持ちは強いつもりでおります。戦争に対する恐れは余人の比ではないでしょう。そんな私が、「なぜこのような惨たらしい悲劇が起こったのか」興味を持ち、調べ、勉強するようになるのは自然な事でした。

 

 もちろん、太平洋戦争であるとか個別の戦争に絞れば様々な事情があるわけですが、今回はそこには触れません。とにかく、戦争が起こるとき、その要因には必ずどんな形であれ貧困の問題がある、それが私が人生のそう少なくない時間をかけて追求し、発見した事実である、という事です。

 

 という事はですよ、戦争をなくして世界を平和にする最も正攻法と言える道筋とは、「世界中の人に行き届き、なお余りある富を生み出すこと」に他なりません。

 

 富を生み出すというのはどういうことか、これは経済学の領域の話になりますが、「富を生み出した結果」を計測する指標が、良くニュースで聞く「GDP」というものになります。GDPというのは、少々形式ばった定義を言うなら「その年、国内で生産された”付加価値”の総合計」という事になります。この付加価値、というのが集まると「富」になる、と理解して頂ければと思います。

 

 付加価値とは何か。例えば100円で竹の板を買い、竹トンボに加工して200円で売った場合、私の「竹トンボに加工する」というのが100円の付加価値を生んだことになります。私に竹の板を売った人も、竹そのものを50円で仕入れて板に加工して私に100円で売ったのなら、板への加工で50円の付加価値を生み出しています。竹の生産農家さんは(肥料とか土地とかは使用していますが)実質0から50円の竹そのものを収穫して出荷してますので50円の付加価値を生んでいます。

 竹が竹トンボになるまでに生まれた付加価値を合計すると200円になります。つまり最終販売価格と同じなわけですが、これを1年、国内全てで合計するとGDPになる、という事です。

 

 これを小売業にあてはめますと、仕入れた物にいくらの利益を載せて売ったのか、いわゆる「粗利」の部分がざっくり付加価値になると考えて下さい。

 

 富を生み出すというのは「出来るだけ粗利を稼ぐこと」と同義であることがお分かり頂けるかと思います。つまり粗利を取って売る事は、GDPを増やし国の富みを増やすことに繋がります。日本の富が増えるとある程度の相乗効果によって世界全体の富も増えます。するとどうなるでしょう。戦争の無い平和な世界がちょっと近づくのです。

 

 無理のある議論とお感じになるかもしれませんが、実際のところ世界中の経済学者や政治家が目指しているのはそういう世界です。(モラル的に)良い経済システムを政治が導入することで豊かさを増やし、貧困をなくし、人と人の争いをなくす事が、政治や経済の終局的な目的なのです。

 

 日本のGDPはおよそ30年ほど横ばいで増えていません。これは結果的に我々の給料が増えないという現象を直接的に引き起こしていますが、上記に述べたことを踏まえるとこれはすなわち我々が30年近く「付加価値を増やしていない」もっと言えば「粗利を取る商売をしていない」ことを意味しています。GDPを増やし、給料を増やしたければ、まず粗利を取る商売をしなければなりません。日本のGDPが伸びていない中、アメリカや中国、アフリカやアジア諸国は軒並みGDPを増やし、豊かさを手に入れ、かつてなかった平和と繁栄を手にしつつあります。しかし日本が足を引っ張っています。日本ももっと豊かにならなければなりません。これは国際社会における責任です。

 

 商売人の心得、それは「稼ぎ、増やし、平和を実現しよう」ということになります。